読書記録―白川静「中国の神話」第1章①

学び

「中国の神話」

 今月から、「毎週1冊は本を読む」と目標を立ててみましたが、内容によっては難しいですね。大学のときに、漢文のゼミに入っていたので、白川静氏の「中国の神話」を手に取り、懐かしく読み始めましたが、まったく進みません…。普段生活しているだけでは読まない漢字や語彙が多く、何度も読み返す必要があるからです。

 そもそも、いつか読もうと10年ほど前から積ん読していた本なので、退職などという機会でもなければ老後まで読まなかったかもしれません。そして、気力体力視力が衰えてからでは、読めなかったでしょう。今、このタイミングで手に取ったからには、少しずつですが読み進めたいと思います。

 ブログには、少しでも記憶に残すため、パチパチと要約を打っていこうと思います。

第1章 中国神話学の方法 ―1 第三の神話

 白川氏は、神話とは、「その民族と文化の成立する過程において生まれ、その発展の段階に応じて展開し、何らかの統一的意思によって体系づけられるものである。」と定義しています。そして、中国神話について述べるにあたり、氏は、世界の神話構成をABCの三種に分類しました。

 天孫系を中心として出雲系、筑紫日向系神話を包摂する形をとるわが国の神話。それは、国家形成の諸段階に対応する時間的な層序の関係を含むためであり、松村武雄博士の表現を一部借用し、「A:縦の時間的組織関係をもつ神話」と白川氏は定めました。

 一方、ギリシア、ゲルマン、ケルトなどの西欧諸族の神話には、わが国の神話のように求心的な複合の関係がなく、種々の物語群が並列的に横様に結びついているため、「B:横の同時的組織関係をもつ神話」としています。

 そして、1つの神話体系としてはもとより、神話群として取り扱われることのなかった中国の神話を、これらとは異なる第三の世界「C:分列的な様態の神話」としました。

 さらに、A・B・Cそれぞれの様態の中にも、a・b・cの要素が含まれる場合があると述べています。白川氏は、このような神話体系の類型を通じて、政治的、文化的統一を達成した段階ではA的な体系、文化的統一の過程においてはB的な体系、その併存的な関係ではC的な体系の様態を取る傾向があるのではないか、と仮定しました。

 氏は、「神話なき国」とされた中国の神話は、「体系なき神話」であり、「体系化を拒否する神話」であったと述べています。

おすすめの漫画 白井恵理子「黒の李氷・夜話」

 卒論の題材として研究していた中国神話ですが、本を読むたびに、昔読んでいた漫画を思い出します。白井恵理子さんの「黒の李氷」シリーズです。

  ↑ Amazonにて、Kindle版発売中(①~⑦)

 不老不死の少年李氷が、古代中国のさまざまな時代で、歴史的な出来事と遭遇する話です。中国だけでなく日本の歴史とも関わり、その要所要所に、輪廻した初恋の女性が登場するというもので、毎回悲恋に終わります。(白川氏の方法によると、Aの様態の話ですね♡)

 第1巻は、存在そのものが伝説の域を出ない夏王朝。「中国の神話」の中で、白川氏が「王朝の終わりに必ず暴君をおくのは、古い王朝物語の一つの形式である。」と述べているように、古代中国の王朝の末期には、有名な暴君やそれをそそのかす悪女が登場します。すでに、悲劇の舞台は整っていますよね…人間の果てしない欲望や愚かさ、悲しみ。不老不死の李氷にとっては、相手にする必要のない些細な出来事ですが、その中で輝くまっすぐな魂に惹かれ、人間の争いに巻き込まれていきます。

 白井さんの絵は独特で、何か人を惹きつけるものがあります。李氷の妖しい微笑みはもとより、後に傾国の美女となる人物の澄んだ瞳、日本の古い神の暗い瞳、天を縫合する女媧の姿…数十年経た今でも、私の心の中に住み続けています。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました